それぞれに、さよならを。


「それって、昼飯?」


私しか居ないはずの空間に響いた、声。


「………、」


ゆっくりと振り向いた先にあるのは、すらりと高い男の人。


(…何、この人、)


話した事も、まして見た事も無いその人に一瞬だけ意識が止まった。


(…早く教室戻ろ、)


目線を前に戻して見なかった事に。


大学に入る時に極力、"人"と"面倒事"には関わらないって決めたのだ。


他人と馴れ合ったって、良いことなんて…ひとつもない、そう、学んだから。


「…ねぇ、昨日もソレだったよね」


そう言ってその人は断りも無く、当たり前の様に私の隣に腰を落とした。


(………、)


「ねー。」


口に含んだゼリーを流し込みながら、残念だけど明日から違う場所を探さなきゃ、なんて頭の片隅に思った。

「…ココね、俺のお気に入りの場所。」


名前も何も知らないその人は黙ったままの私に小さく頭を傾げた。
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