それぞれに、さよならを。


(ちょっと、待って、なに今の、…)



教えても居ないのに知っていた私を呼んだ、気怠げな声が、耳に残る。



捕まれた手首に今だ残る感覚が、



(…キモチワルイ)



足速に構内へと入り、ドクドクと脈打つ心臓を何とか落ち着かせる。



ざわついた構内に、不思議と安心感が溢れてほっと胸を撫で下ろした。



ゆっくりと入った講義室。



窓際に腰を落ち着かせて荷物の整理をする。



(……。)



「…クスクス…ねー、やばくない?」

「女としてどうなの?今時あんなん居るんだねー」

「アハハ!確かに超希少でしょ〜」



聞こえて来る女子の会話。



勿論それは私に向けての批難の声。



(…好きなだけ、言っててよ)



そんな事言われても、何とも思わない。



私はもっと、辛い事を知ってるから。



そう頭の片隅で呟いて小さくため息を吐いた。
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