それぞれに、さよならを。
きょろきょろと辺りを見回すと、突然開いた扉。
「…あれ、」
そこに立つのは、背が高い男の人。黒い髪の片方を耳に掛けて、手に持った白い袋を揺らした。
「…もう来たの?つーか、漣は?」
「…へ?」
辺り前の様にそう首を傾げるその人に、間抜けな声を漏らした。
だって、話し掛けられるなんて、思ってなかった。
「漣と一緒に来たんじゃねーの?」
「……?」
話しについて行けない私はそのまま黙ったまま、立ちすくむ。
「……ちょっと、そのまま待って。」
眉を寄せたその人は私に制止を促し、そのまま真っ直ぐ窓の方へと進むとため息をついて、ドサリとソファーに腰を下ろして携帯を耳に当てる。
「…お前、何してんの。」
(………。)
「…いや、それは知ってるけどさ、此処に居るし。」
(…何これ。出てっていいかな…)
意味が分からないまま突っ立って居る私は携帯で話すその人の横顔にため息を漏らした。