君が僕の名を呼ぶから
「……ねぇ、聡史くん。」




涼子は僕のほうを見て、とうとう涙をこぼしながら尋ねてくる。




「……私を愛してくれる人は、いるのかな?」





涼子は「愛」ということを知らない。




僕は、両親や祖父母の死に直面してきたが、両親も祖父母もちゃんと僕を愛してくれた。




僕は、「愛」というものを知っている。




涼子が自身を責め、寂しさに苛まれながら、その小さな体を守ってきたと思うと、心が引き裂かれそうな思いだった。




僕は、自然に体が動いていた。




震えながら泣く涼子をしっかり抱きしめていた。





「……いるさ。僕が、ずっと涼子を愛していく。」




今考えれば、キザな告白だったなと思う。




どさくさに紛れる形で、涼子を抱きしめてしまったし。





「……本当に?」




それでも涼子は、全てを凌駕するような柔らかい声で僕に尋ねてくる。




「……うん。」




涼子から体を離し、顔をしっかり見合ってうなずいた。




……涼子は初めて、僕の前でとびっきりの笑顔をした。
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