君が僕の名を呼ぶから
〜現在 聡史〜
「……松田くん?」
……田山さんの声でふと我に返った。
……何かひどく疲れているような感覚、ダルいような感覚が僕の体を支配していた。
「……もういいかな?何か言葉が出てこないや。」
僕はそう言うと、力なさげに微笑んだ。
「……あのさ、衝動的になっちゃいけないってよく分かってるし、松田くんに悪いなって思うんだけど……抱きしめてもいいかな?」
田山さんはそう言って、僕の前に立った。
「何言って……」
僕がそう言った時には、彼女の腕に包み込まれていた。
「……嫌いになるならなってもいいよ。でも、そんな悲しそうな顔してるのに、私は何もしないなんてできないから。」
彼女はそう言って、僕の体をしっかりと抱きしめてくれた。
僕は、何も言葉を発さず、反抗もせずにじっとしていた。
……彼女を嫌いになどなれるはずもなく、僕は行き場のない悲しみや虚しさを抱えながら、ただ彼女の腕の中で涙を流すことしかできなかった。