君が僕の名を呼ぶから
「……ごめん。遅くなっちゃった。」



あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。




聡史と田山さんが戻ってきたころには、僕の時間の感覚はすっかり失われてしまっていた。




「……いいよ。何か僕疲れちゃった。そろそろ戻らない?」




僕は、そうみんなに提案し、散策を終えることにした。




未だに何故城山さんにあんな話をしてしまったのか、聡史に話していないことを語れたのかが不思議で仕方がなかった。




「……翼?大丈夫?」




ホテルに向かうバスの中で、隣で聡史は僕の様子を案じてくれているようだった。




でも、聡史の表情も妙に疲れているような感じだった。




「うん……聡史は?」




「……僕は、少し無理みたい。ホテルに着くまで寝ててもいいかな?」



「うん。」




聡史が僕にここまで弱音をはっきりと吐いてくるのは珍しい。




僕と離れていた時間に、何かがあったことは確からしい。




やがて、スースーという寝息が聞こえてきて、聡史は僕の肩を枕にして眠ってしまった。




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