君が僕の名を呼ぶから
僕は眠らなくてもよかったと言うと、嘘になってしまう。




でも、僕を信頼して、安心しきった表情で眠っている聡史をしっかり支えたいと思った。




「……聡史。」




僕は、消えゆくくらい小さな声で彼の名を囁いた。




「……涼子。」




すると聡史は、悲しげにそう呟いて、一筋の涙を流した。




……聡史もまた、辛い思い出を持つ想い人がいるのだろう。





僕は、隣にいる聡史を優しく見つめながら、全てを聡史に話そうと決心していた。




どうなるかなんて分からないけど、こんなに大切な友達に何も言えないのは、




悲しいと思った。




……聡史から同じような話を聞きたいわけじゃない。



ただ、話したいと思った。
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