君が僕の名を呼ぶから


〜翼の回想 中学三年 夏〜



「泣くなって。」




「だって……。」




僕は事実上最後の試合になってしまった、県大会のベスト4で行われる最終リーグの試合後、涙を流すチームメイトたちに言葉をかけていた。




「キャプテンは悔しくないんですか?」




「ん?悔しい……いや、悔しくはない。だって、みんな楽しんで、一生懸命自分たちのバスケをしたもん。それで負けたんだから、悔いはない。」




僕はそう言って、微笑みを浮かべた。




「……翼には敵わないな。」




同級生はそんなことを口々に言い、後輩たちも何かが吹っ切れたように笑顔になった。




「今度は、全国へ行ってくれよな。」




僕はそう言った。





「あれ……翼先輩。あの人、彼女っすか?」




「ん?」




後輩に言われ、見た方向には、悲しそうな表情を浮かべている真希が立っていた。
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