君が僕の名を呼ぶから
「あ……ごめんな。ちょっと抜ける。」




僕はそう言って、真希の方へ向かった。




「真希?」




真希は僕の顔を見て、より一層悲しそうな表情になった。




「……翼くん。負けちゃった。」




「ん?」




「いっしょうけんめいやったのに……」




真希の美しさは、年齢を重ねるごとに磨かれている。




そんな真希が、涙をこぼしそうなくらいの表情を浮かべている。




絵になる風景だった。




「……真希。僕は悲しくないよ。」




「……かなしくないの?」




「そりゃ勝ちたかったよ。でもね、みんな精一杯やった。それで負けたんだから、悲しくはないよ。」




僕がそう言うと、真希はゆっくりと微笑んだ。




「僕、カッコよかった?」



「うん!キラキラしてた。」




「キラキラ?」




「他の人たちより、キラキラしてた。」




「……ありがとう。真希が最後の試合、見ててくれたからそれだけでいいや。」



僕はそう言って、真希の頭を撫でた。
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