君が僕の名を呼ぶから
「真希。そろそろ帰ろっか。」




しかし、そんな楽しい時間もあっという間に過ぎてしまい、閉園時間が近づいてくる。




「……あ、じゃあ、さいごにあれ乗ろ!」




真希は、僕の心の中など知らずに、相変わらず無邪気だ。




「……観覧車か。うん。」



真希が最後に乗りたいと言ったのは、大きい観覧車だった。




「はいー、お二人様。どうぞー。」




閉園が近づくころの観覧車は、よく空いていた。




「……真希。今日は楽しかった?」




「うん!……翼くんは、たのしかった?」




「……うん。」




僕たちは、小さな密室の中で、話をしていた。




次第に上がっていく観覧車、広くなっていく景色を見ながら、




このまま時間が止まって、下に着かなければいいと思った。




「……でも、翼くん。いつもと、ちがうよ?」




真希は、心配そうな表情を浮かべて僕を見る。
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