君が僕の名を呼ぶから
「……翼くん。どうしたの?」




「……真希。」




僕は、止まりそうにない涙を手で拭ってみた。




真希の心配そうな表情が滲んでいる。




観覧車はもうすぐ頂上だ。




「……抱き締めていい?」




「……だきしめる?」





僕は、驚いている真希をそのまま引き寄せ、胸の中に抱いた。




「……真希。」




真希は、急に言葉を発するのをやめて、静かに僕の背中に手を回す。





……真希は、どうしてこんなに温かいのだろう。




どうしてこんなに柔らかいのだろう。





……とにかく幸せだった。





「……翼くん。夕日が、きれいだよ。」




沈み行く夕日は、全てをオレンジ色に染め、幸福を倍増させてくれている。




「……真希。キスしよ。」




「……うん。」





それから僕たちは、幸福な空間でキスをした。




長い長いキスだった。




時々、呼吸を整えて、下に観覧車が着くまで、キスをし続けた。


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