君が僕の名を呼ぶから
観覧車が一周し、下に着くと、僕の心の中には急に虚しさが込み上げてきた。
真希は僕の隣で、幸せそうな微笑みを浮かべているのに、僕の心は大きな大きな虚しさが支配している。
「……真希ね。」
隣を歩く真希が、急にしゃべりだす。
「……生まれてきて、よかった。」
……僕は、微笑みながらそう言った真希に、思わずまた泣きそうになってしまった。
「……みんなと、ちがうって。ようちえんの時に、初めて言われて、かなしかったよ。でも、翼くんが、一緒にいてくれたから、真希は、頑張れたんだ。だから、ありがとう。」
……真希は、汚れを知らない。
いわば、真っ白なキャンバス。
逆に言えば、何色にでも染まることができる。
きっとこのままなら、真希は僕色に染まるはず。
……でも、人の言葉に流されたあの時の僕は、そんなことをできるはずもなかった。