君が僕の名を呼ぶから
「……遅くなっちゃったな。」
家に着いた時には、夏の夜といった感じになってしまった。
「ありがとう。翼くん。」
「……うん。」
僕は迷った。
しっかり迷った。
「……少し聞いてほしいんだ。」
「うん?」
「……部活が終わって、僕は高校に行くために勉強しないといけない。」
「……勉強?」
「うん。だから、真希とはなかなか一緒にいられなくなる。」
自分の口から出てくる言葉が、僕を操っているかのようで、
ただ、機械的にしゃべっていた。
「……翼くん?」
「……僕じゃない、誰かと真希は一緒にいたほうがいいのかもしれない。」
それでも、真希に酷いことを言っているんだという感覚はあった。