君が僕の名を呼ぶから
〜聡史の回想 中学三年生 春〜
もうあの頃の僕に、大きな悲しみはなかった。
「涼子!」
「ちょっと待って。」
気づけば僕たちは中学三年生になっていて、ずっと涼子は僕の大切な人だった。
「……涼子はいつも時間かかるよな。」
「女の子だから。」
涼子も自然な笑顔が多くなった。
時々、僕も涼子も学校でいじめられたりしたが、前を見て、支え合いながら生きてきた。
「新しい学年かぁ。聡史くんと一緒のクラスだといいなぁ。」
「大丈夫。一緒になるよ。」
僕は、そう言って涼子の手を握った。
「……行こっか。」
「……うん。」
僕たちのもとに、予期せぬ別れが近づいてきているなんて、誰が分かっただろうか。