君が僕の名を呼ぶから
そして、デート当日。




「涼子?」




「もう少し待って!」




その日、涼子はいつも以上に支度するのに時間がかかっていた。




「……お待たせ。」




そう言って、ようやく部屋から出てきた涼子を見て僕は言葉を失った。




「……どうしたの?」




そう僕に不安げな表情を浮かべて尋ねてくる涼子の姿は、いつも以上に美しかったのだ。




「……ううん。何でもない。」




しかし、照れくさくて素直に言ってあげられることができなかった。





「……行こっか。」




「……うん。」





僕たちは手を繋ぎ、ゆっくりと並木道を歩いた。





涼子の手は、この世で一番柔らかく、温かかった。
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