君が僕の名を呼ぶから
「……涼子ちゃん、ちょっといいかしら?」
甘い時間を過ごし、施設に帰ると、施設長さんが涼子を呼び止めた。
「聡史くんは部屋に戻ってて。」
僕は、不思議に思ったけれど、言われるがまま部屋に戻った。
「どうだった?水族館デートは?」
「……うん。よかったよ。」
拓真くんは高校三年生になった。
ここで一緒に過ごすのも、もう少しだ。
「俺があげたチケットが、役にたったみたいでよかった。」
そう、水族館のチケットは拓真くんが僕にくれた。
「……なぁ、聡史。」
「ん?」
「人を好きになるのは、理屈じゃないよな。」
「……え?」
「……この先、何があっても涼子だけは離すなよ。」
「……うん。」
僕は突然言われたその言葉に、ぎこちない返事しかできなかった。