君が僕の名を呼ぶから
「……僕も、涼子と一緒にいたいよ。」
僕は、出来るだけ優しくそう言った。
「……でもね、今の僕には涼子を幸せにしてあげられるって、約束はできない。」
僕の胸の中で、涼子はただ黙って僕の話を聞いてくれていた。
「……もし、僕が自信を持って、涼子を幸せにしてあげられるなら、今すぐに涼子を連れて逃げてる。でも、それじゃあダメなんだ。僕たちはまだ中学生だし。それに僕には、もう迎えに来てくれる両親はいないけど、涼子にはその両親がいたんだから。」
……この時の僕の判断が間違っていたとは思わない。
……でも、正しかったとも思わない。
きっと、僕にもう少し力があって、衝動的な性格だったら、涼子を失わずに済んだのだろう。
「……一回、ちゃんと話をしよ?」
僕は、胸の中の涼子にそう言い、体を離して、見つめた。
「……ね?僕はいつでも涼子の味方だから。」
僕がそう言うと、涼子がゆっくりうなずいた。