君が僕の名を呼ぶから

僕は、ただ拳を握りしめながら、涼子が部屋から出てくるのを待っていた。





僕は、情けないやつだと思った。





大好きな人がいないと何にも出来ないのに、大好きな人を守ることが出来ない。




……力が欲しかった。







あれから、どれだけの時間が経っただろうか。





涼子たちが、部屋から出てきた頃には、もう夜だった。





「……涼子、明日迎えに来るからね。」





お母さんであろう女の人はそう言って、男の人と玄関から出ていった。





……明日?





「……涼子?」





「……明日。ここを出ることになったの。」





「そ……そっか。」





もう少し先になるかと思っていた別れが、あまりにも早くやってくるのを知り、目頭が熱くなるのを感じた。
< 145 / 244 >

この作品をシェア

pagetop