君が僕の名を呼ぶから
僕は、ただ拳を握りしめながら、涼子が部屋から出てくるのを待っていた。
僕は、情けないやつだと思った。
大好きな人がいないと何にも出来ないのに、大好きな人を守ることが出来ない。
……力が欲しかった。
あれから、どれだけの時間が経っただろうか。
涼子たちが、部屋から出てきた頃には、もう夜だった。
「……涼子、明日迎えに来るからね。」
お母さんであろう女の人はそう言って、男の人と玄関から出ていった。
……明日?
「……涼子?」
「……明日。ここを出ることになったの。」
「そ……そっか。」
もう少し先になるかと思っていた別れが、あまりにも早くやってくるのを知り、目頭が熱くなるのを感じた。