君が僕の名を呼ぶから
「……じゃあね。聡史くん。」
「……うん。」
別れの朝。僕は、泣きたかった。
でも、涙は流さなかった。
涼子も涙は見せず、僕に笑いかけてくれたから。
僕が泣いたら、涼子も泣いてしまうんじゃないかと思った。
「……涼子!」
僕は、涼子を引き寄せた。
「……必ず連絡する。」
「……うん。待ってる。」
「……元気で。」
「聡史くんもね。」
そう言って、涼子は笑った。
太陽にも負けないくらい、眩しい笑顔だった。
……僕は、また涼子に会えると思っていたし、関係が続くなら、その術はいくつでもあると思っていた。
……でも、それは間違いだった。