君が僕の名を呼ぶから


「……じゃあね。聡史くん。」




「……うん。」




別れの朝。僕は、泣きたかった。




でも、涙は流さなかった。



涼子も涙は見せず、僕に笑いかけてくれたから。




僕が泣いたら、涼子も泣いてしまうんじゃないかと思った。




「……涼子!」




僕は、涼子を引き寄せた。




「……必ず連絡する。」




「……うん。待ってる。」




「……元気で。」




「聡史くんもね。」




そう言って、涼子は笑った。





太陽にも負けないくらい、眩しい笑顔だった。





……僕は、また涼子に会えると思っていたし、関係が続くなら、その術はいくつでもあると思っていた。





……でも、それは間違いだった。
< 150 / 244 >

この作品をシェア

pagetop