君が僕の名を呼ぶから
「なぁ、聡史。」




「……何?」




涼子が行ってしまったあと、拓真くんが僕に尋ねる。



「……よかったのか?」




「……よくはないけど、今の僕には引き留める力はないから。」




「……力ってなんだろうな。」





「……えっ?」




拓真くんの表情が、少し怒っているように見えた。




「多分、その正体が分からないまま、力を追い求めても、聡史にその力は身に付かないよ。」




「拓真くん……?」




僕には、拓真くんが何故怒っているのかが分からなかった。




「……離れないと分からない想いもあるってこと。」




拓真くんはそう言うと、僕の頭に手を置いた。




「……まぁ、何かあったら言ってこいよ。」





そう言って、部屋を出ていった。





……僕は、訳が分からないまま、空を見上げた。




「……涼子。」





僕は、弱々しい声でそう呟いた。



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