君が僕の名を呼ぶから
「……もう僕は、あのときみたいに力がないなんてことはないよ。」




「……でも!」




「母さんが反対するなら、親子の縁も切るつもりでいる。もう自分の気持ちに嘘をつくのは嫌なんだ。」




僕は、食事中に席を立ち、トイレで久しぶりに実家に電話をかけた。




突然の僕からの電話に、母さんは嬉しそうにしていたが、用件が真希のことだと分かると母さんはあからさまに暗くなった。




「その方がいいんじゃない?僕と親子の縁を切れば、僕と平岡家は何の関係もなくなる。大学の金だって、生活費だって、僕が何とかしてみせる。僕には真希が必要なんだ。」




僕はそう言って、一息おいた。




「……確かに障がいを持っているっていうことは少し違うことかもしれない。でもさ、真希はあんなにキラキラした笑顔を持ってるし、それに何に対しても一生懸命なんだ。ズルイこととか、醜いことなんかを覚えてきてしまった僕たちよりも。真希をそういう目で見てる母さんの方が、ある意味障がいを持ってるんじゃないの?」





……長い間言いたかった本当の想い。




何をいまさらと笑われるかもしれないが、あの頃の僕には言えなかった言葉を言えたということが大事なんだと思う。




「……母さんが悪かったわ。」




少しの沈黙の後、母さんはそう呟いた。
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