君が僕の名を呼ぶから
「……真希ちゃんがいい子だなんてことは、100人いれば100人が分かること。でも、私は翼の母親として翼を守る義務がある。……だから、少し意地になってたのかもしれない。」




……ようやく僕は一歩踏み出すことができたような気がしていた。




それは小さく、僕以外は絶対に気付かないであろう一歩だけど。




僕にとっては大きなものだった。




「今度の休みに、大切な親友と一緒にそっちに戻るよ。」




「分かったわ。」




そう言って電話を切った。





……僕は一人じゃあの場所には戻ることができない。




……それが証拠に今まで一度もあの場所に戻ることはできていないのだから。





僕が頼れるのは、聡史しかいない。




聡史は、きっと僕の頼みを聞いてくれる。




そう信じていた。
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