君が僕の名を呼ぶから


……一瞬、耳を疑った。




「……本当に?」




「……あぁ。」




今すぐに会いたい、そんな衝動に駆られた。




「で、涼子はどこに?」




「落ち着け。」




そんなこと言われても、体の中から溢れてくる興奮は抑えきれそうにない。




「……涼子は、お前に会いたくないって言ってる。」




「……えっ?」




……何で?




……もう僕のこと、嫌いになったのかな?




「……それが涼子の本心じゃないことを、俺はお前に伝えようと思ってな。」




「……涼子の本心?」




しばらく間があく。




「……涼子は両耳の聴力を失ったらしい。」



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