君が僕の名を呼ぶから
「でも……僕はあの子だけとは一緒になりたくないな。」
「……あの子?」
「うん……。田山(たやま)さん。」
田山希(たやまのぞみ)。
おとなしい性格で、しっとりとした美人って感じだったと思う。
「どうして?」
聡史が自ら僕にそういう話をするのは珍しい。
だから、いけないと思いつつも話を掘り下げてしまった。
「いや……言いたくなかったら別にいいんだけど……。」
こんなことで聡史に嫌われたくはない。
僕は慌てて場を繕っていた。
「……告白されたの。手紙だけどね。」
……あれ?
何か似た話を女の子にされたような……
「で、酷い態度をとったから、気まずいなって。」
「……そっか。」
……本当はどうして酷い態度をとったかを聞きたかったけど、やめておいた。