君が僕の名を呼ぶから
「……僕のところと同じくらい田舎だね。」
「うん。ゆったりしてるでしょ?」
今、僕の育った施設に向かう電車の中。
「わぁ〜。見て!翼くん。海が、見えるよ!」
……そう。翼が言ったいい案っていうのは、真希さんも一緒に、僕の故郷に向かうというもの。
……真希さんは、とっても楽しそう。
「……聡史くん。」
「……あ、うん。何?」
急に話しかけられたから、びっくりしちゃった。
「……なにか、かなしいの?」
「……えっ?」
「……かなしそうな、かおしてる。」
……気づかなかった。
「……何でもないよ。もうすぐ、降りる駅に着くから。」
「はーい!」
……翼もまた、そんな彼女を悲しそうな表情で見つめていた。