君が僕の名を呼ぶから


セミナー合宿の日は、びっくりするくらいの快晴で、とても暑くなりそうな日だった。




「おはよう、翼。」




「うん、おはよ。」




バスの前で、先に来ていた聡史に返事をすると、何故か聡史はクスクス笑い出した。




「……えっ?どうしたの?」




……今のやり取りの中に笑う要素ってあったかな?




「いや、何か当たり前のやり取りってくすぐったいような気がして。」




……そういえば、聡史とこんな定番みたいな挨拶を、真っ正面からしたことはないかもしれない。




「……そうだね。」




聡史が、そのことを「面白い」じゃなくて「くすぐったい」って表現していたのが少し気になるけど。




「そろそろ集まれよ。」




それから少しして、召集がかかり、自由に時間を過ごしていたそれぞれが一つの大きな塊になった。
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