君が僕の名を呼ぶから
「わぁ……綺麗だねぇ。」
お城の展望台から見る景色は、確かに絶景だった。
「……綺麗だね。聡史。」
「……うん。」
僕たちは自ら彼女たちに話しかけないようにしていた。
翼がどういう心境だったかは、分からないけれど、
僕は、彼女たちの温かさに触れすぎると、
過去の自分を許してしまいそうになるんじゃないかって怖かった。
……彼女たちに、話をしてしまいそうなるんじゃないかって怖かった。
「……少し外を歩いて見ませんか?」
ボーッとしていると、田山さんが僕に話しかけてきた。
「あっ……うん。」
……田山さんは、ガラス細工のように繊細な感じだなぁ。
扱いを間違えると、一発で壊れてしまいそうな……
「暑くなってきたね。」
「……うん。そうだね。」
次第に、翼との会話もなくなっていくのが分かった。