君が僕の名を呼ぶから
「松田くん。一緒に行ってくれる?」



そこには、気弱な田山さんじゃなくて、しっかりとした口調でしゃべる別人がいた。




「うん、分かった。」




僕はそう言うしかなかった。




「平岡くんたちは先に行ってて。後から追い付くようにするから。」



……翼と城山さんが一緒?



それはまずいんじゃないかなぁ?




「僕と翼で……「じゃあ、二人にお願いするね。」




僕が言いかけた言葉に被せるようにして、城山さんがそう言った。




「すまないねぇ。じゃあ、お願いします。」




「いえ。行こう?松田くん。」




「あっ、うん……。」




僕は、翼に話しかけられないまま、田山さんと一緒におばあさんを送ることになった。
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