君が僕の名を呼ぶから
「私の両親は、仕事人間でさ、昔から家政婦さんたちに育てられたの。寂しくても我慢、悲しくても我慢……。そんな毎日だった。」




……全然、そんな風には見えなかった。




元気なイメージだったから……。





「いくら裕福でも、私の心は乾く一方だった。……だからね、私は自分の気持ちを人に押し付けるだけで、人の気持ちなんか分からない。」




「……ふーん。」




僕は、曖昧に返事をしてはみたものの、内心はドキドキしていた。




「だから、人を好きになるなんていう気持ちもなかったんだけど……。」




城山さんはそこまで言って、一息おいた。




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