君が僕の名を呼ぶから
「ご、ごめんなさい!……私が悪いよね。気安くそんなこと聞いちゃって。だから、泣かないで。松田くん。」
田山さんはそう言って、僕にハンカチを差し出した。
「……話すよ。」
「えっ?」
「僕の過去を話してあげる。」
僕は、そのハンカチを受け取らずに、手で涙を拭って、そう言った。
……過去は変えられない。
彼女に話したところで、どうなるものじゃない。
この話をすれば、彼女は僕に対して興味が無くなって、
新たな幸せを探せるんじゃないかと思った。
「……聞いてもいいの?」
「……聞きたくないなら、止めとく。」
「いや、あの……私でよかったら聞かせてください。」
僕たちは、近くにあった公園の大きな木の下にあるベンチに腰をおろした。
……涼子。
……あの時、僕にもっと力があったら、君を守れていたのに。
今さら、許してくれなんて言わない。
ただ、君が生きていることを祈ってる。