君が僕の名を呼ぶから

「ご、ごめんなさい!……私が悪いよね。気安くそんなこと聞いちゃって。だから、泣かないで。松田くん。」




田山さんはそう言って、僕にハンカチを差し出した。




「……話すよ。」




「えっ?」


「僕の過去を話してあげる。」



僕は、そのハンカチを受け取らずに、手で涙を拭って、そう言った。




……過去は変えられない。



彼女に話したところで、どうなるものじゃない。




この話をすれば、彼女は僕に対して興味が無くなって、



新たな幸せを探せるんじゃないかと思った。





「……聞いてもいいの?」




「……聞きたくないなら、止めとく。」




「いや、あの……私でよかったら聞かせてください。」





僕たちは、近くにあった公園の大きな木の下にあるベンチに腰をおろした。





……涼子。




……あの時、僕にもっと力があったら、君を守れていたのに。




今さら、許してくれなんて言わない。



ただ、君が生きていることを祈ってる。
< 45 / 244 >

この作品をシェア

pagetop