君が僕の名を呼ぶから
小、中学校の頃は、みんなと違うものを持っている子が、からかいやいじめの対象になりがちだ。




だから、真希は格好の餌食のはずだった。




知的発達の遅れに気づかない人間はいないし、明らかに人とは違っているから。



しかし、真希がからかわれたり、いじめられたという記憶は、少なくとも僕にはない。




「まきちゃん、すごいねぇ!」




「じょうずだよ!」




それは多分、真希に秀でた才能があったからだと思う。




「まきね、えをかくの、すきなんだ。」




真希の描く絵は、人を惹き付けた。




ただ上手いだけじゃない。



何かが普通の絵とは違った。




「つばさくん。いっしょに、かこうよ。」




「うん。いいよ。」




真希は図工の、絵を描く時間には必ず僕のとなりで一緒に絵を描いた。



「つばさくんと、いっしょだと、もっとたのしい!」



真希の笑顔は、僕の自惚れかもしれないが、



僕といるときが一番綺麗だった。
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