君が僕の名を呼ぶから
「真希。」




結局その日は一日中話題の中心になってしまったが、


放課後はその話題から逃げて、久しぶりに真希のいる教室にやってきた。




いつもなら真希はすぐに振り返ってくれるのに、この日は上の空で、ずっと窓の外を眺めていた。




「……真希?」




「……翼くん。」




ようやく僕に向けて発した言葉は、やけに悲しげだった。




「告白されたって、本当?」




僕は、ドキッとした。




心のどこかで真希なら大丈夫だと思っていた部分があったし、



正直高をくくっていたのかもしれない。




「真希ね、不安なんだ。」


真希は僕の答えを待たずに話し始めた。


「……何が?」



もちろん、僕にはその話を聞いてやることしかできない。




「……みんな、真希とちがう。中学生になって、みんな、真希のこと、忘れちゃうよ……。」




真希は小さい声でそう言った。
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