君が僕の名を呼ぶから
「真希。」
「翼くん!」
真希はそれから毎日放課後は、体育館の外で写生をしながら、僕を待っていてくれた。
雨の日は、体育館の中の邪魔にならない場所で、練習風景を絵に起こしていた。
「大丈夫?段々寒くなってきたけど。」
「うん。だいじょうぶ。」
真希の描いた絵はいつも僕に勇気をくれた。
「見て!紅葉が綺麗だよ。」
「もみじ?」
「うん。この赤い葉っぱは紅葉っていうんだ。綺麗でしょ?」
「うん!」
あの日以来、僕たちの間には何もない。
手を繋ぐことも、キスをすることも。
葉子さんが言ったように、「恋人」という概念を真希と共に築き上げていくのは、容易ではないらしい。
「……そうだ。翼くん、これ。」
「えっ?何?」
そう言って真希の方を見ると、真希は鞄の中から手紙を出していた。