君が僕の名を呼ぶから

「……手紙？」



「うん。くつを入れるところに入ってた。」



一気に僕の胸の中にどす黒いものが広がっていく。辺り一面にだ。



その手紙の中身は開けなくても大体見当がついていた。



問題は差出人が誰かということだ。




「……坂井孝太（さかいこうた）？」



封筒の裏には、達筆な文字でそう書かれていた。少なくとも僕は聞いたことがない名前だ。




「真希、知ってる人？」




「うん。真希、知ってるよ。」




「えっ？」




真希からの返答は僕の予想を覆すものだった。……真希に僕以外の男子の友達がいる。



にわかには信じられないことだった。いや、百歩譲って友達はいたとしても、告白をするくらい真希と親しい関係を築き上げてきたのだろうか。



「どんな人？」



真希は、僕のその質問にすぐには返事をしなかった。



きっと、抽象的すぎて彼の何をどう表現したらいいのかが分からなかったのだと思う。




「いい人。」



最終的に真希が放った言葉は、僕の嫉妬心を煽るものでしかなかった。