君が僕の名を呼ぶから
僕は彼の質問の意味が分からなかった。
「……あの、よく分からないんですけど。」
彼は僕がそう言うと、僕の方を見た。
「……そうです。分からないが普通の答えです。僕にも分からない。でも、ただ1つ言えるのは、怖いということ。」
どんどん話が僕の分からない方向へと進んでいく。
「分からないということは、恐怖です。視力を失った世界が闇なのか、果たしてそうじゃないのか。それが分からないから、心の準備のしようがない。」
「心の……準備?」
……少し話の流れが見えてきたような気がした。
「……僕は、いずれ視力を失います。もう左目はほとんど見えない。」
……僕は言葉を失った。
ただ、彼の目を真っ直ぐ見つめることしかできなかった。