君が僕の名を呼ぶから
「段々と視力を失い、いずれ失明する。それがいつになるのかは分からないけど、確実に。それが僕の障がいです。」
辛いことを口にしているはずなのに、不思議と彼の表情は柔らかかった。
「僕は、この障がいを使って翼くんの同情を引こうなんて考えてません。それにそんな手は真希ちゃんには通用しない。」
「……真希の言う好きは、僕の望んでる好きじゃない。」
「……それはどうでしょう。真希ちゃんは翼くんのことを話しているとき、いつもニコニコしています。好きという言葉に壁を作りすぎているのは翼くんじゃないですか?」
……その時の僕には、その内容を理解することはできなかった。
「……ただ、これだけははっきり言っておきます。」
「……はい。」
窓から心地よい風が入ってきた。