君が僕の名を呼ぶから
「踏まれた足の痛さは、足を踏まれたことがある人間じゃないと分かりません。」
「……どういう意味ですか?」
「いくら翼くんが真希ちゃんのことを好きでも、いくら全てを受け入れようと思っても、障がいを持つ人間の気持ちは、障がいを持つ人間にしか分からないということです。」
「……はい?」
「翼くんは真希ちゃんと過ごしてきた時間は一番長いけれど、知的発達の遅れから通常学級でみんなと一緒に授業を受けられない真希ちゃんの気持ちを考えたことがありますか?」
……その言葉を聞いた時、僕は頭を金づちで殴られたような衝撃を受けた。
今まで、真希のことを分かっていると思っていたけれど、
真希の気持ちを分かってやれてたかな……。
「いつか必ず、翼くんは壁にぶつかります。障がいを持つ人と恋をするって、そういうことです。」
彼は、淡々とそう言った。