君が僕の名を呼ぶから
「……真希ちゃんが僕を好きになってくれないことは分かってるし、僕も何かの見返りを求めてあの手紙を書いたわけじゃない。ただ、好きという気持ちを伝えたくなっただけです。」




「……字が、とても綺麗でした。」




僕は、彼の話の内容と、その落ち着き方に圧倒されて、訳の分からないことを口にしていた。




「……誰にでも1つくらい得意なことがあるもんです。真希ちゃんは絵を描くこと、僕は字を書くこと。翼くんは、バスケに人をまとめること、たくさんの得意を持ってますね。」




「いや、そんな……。」




「僕はたとえ失明しても字を書くことを止めないと思います。何か工夫して。」



「……坂井くん。」




僕は、ゆっくりと彼の名前を口にした。




「……今という時間は、かけがえのない宝物で、二度と巡ることはなく、何よりそこに生きていたという証です。将来何が起こるかなんて、予測するのは不可能です。」



坂井くんは、そこで間を置いた。
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