君が僕の名を呼ぶから
「だから将来、翼くんの前に現れる壁が、どんなものなのかは分からない。厚さ、高さ、色……そんなものは分かるはずがない。だから、今を真希ちゃんのことを含めて、精一杯生きて、力を蓄えておいてください。」



坂井くんはそう言うと、僕に手を差し出した。




「大切なものをしっかり見極めて、守れる男になってください。」




「……はい。約束します。」




僕はそう言って、坂井くんと握手を交わした。






……坂井くんが言っていた「壁」。




あの時の僕には分からなかったが、




それから間もなくして、僕はその壁にぶち当たることになる。
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