君が僕の名を呼ぶから
〜現在 翼〜
「……もういいよ。」
僕がその優しい声で我にかえった時、涙を流していることに気づいた。
城山さんは、そんな僕を柔らかく抱き締めてくれている。
……その状況を理解しても、何故か拒否しようとは思わなかった。
「……私がその壁にぶち当たった時の話を聞くには、付き合いが浅すぎる。」
「……城山さん。」
「もっと仲良くなって、話しても大丈夫になったら、話して。私、待ってるから。」
「……うん。」
話を初めてからどれくらいの時間が経ったのだろう。
僕には分からなかった。
「……私、平岡くんのこと好きだから。」
城山さんはそう言って、しばらく僕を抱き締め続けてくれていた。
……真希。
…………真希。
別の女の人に抱き締められても、浮かんでくる真希の笑顔は消えてはいかなかった。