君が僕の名を呼ぶから
「……まさか田山さんに話すことになるとは思わなかったよ。」
「……うん。」
僕たちは、ベンチに腰かけて話をしている。
それほど大きくない公園のような場所。
ちらほら人が行き来をしている。
「……僕ね、忘れられない人がいるんだ。」
「……忘れられない人?」
僕は、ゆっくりと頷いた。
「彼女は本当に泡みたいでさ、優しく包み込むようにして僕の傍にいてくれたのに、一瞬で僕の前から姿を消しちゃった。……今となっては、生きてるのか死んでるのかも分からない。」
「……連絡はとれないの?」
「うん。探してはいるんだけど、手がかりがなくて。」
「でも、親とかに頼めば何とか……。」
僕は、田山さんの問いかけに大きく首を振った。
「……僕に両親はいない。僕とあいつは、施設で出逢ったんだ。」
涼子。
今、君はちゃんと笑えていますか?