君が僕の名を呼ぶから

「部屋は二人部屋だよ。」




僕は、笑顔で色々世話をしてくれる伊藤さんに申し訳ないと思いながらも、どうしても笑うことができなかった。




「拓真。」




「はい!」




部屋を開けると、中には僕と同い年ぐらいのカッコいい男の子がいた。




「聡史くん。この子、斎藤拓真(さいとうたくま)。背が小さいから幼く見えるけど、小学5年生。仲良くしてあげてね。」





「はい……。松田聡史です。」




「俺、拓真。聡史って呼ぶから、聡史も敬語じゃなくていいし、好きなように呼んでよ!」




「……うん。」





彼もやはり笑顔だった。




きっと何か身を引き裂かれるような辛い出来事を踏まえてここにいるのに、笑顔じゃない子は彼女以外いなかった。


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