君が僕の名を呼ぶから
僕はそれからもご飯を食べる時は、涼子の傍で食べるようにした。
彼女は相変わらず僕に何も話しかけてくれない日々が続いた。
そんなある日。
「……松田くん。」
初めて聞く彼女の声は、とてもしっかりしているのにどこか柔らかい印象を受けるものだった。
「……何?」
「……どうして私を気にするの?」
その質問に僕はどう答えるべきか悩んでしまった。
彼女の表情がとても悲しそうだったから。
小学生だった僕は、なかなか彼女に言葉を返せなかった。
「……分かんないよ。でも、佐藤さんが気になるんだ。」
答えになってはいなかった。
僕は、彼女がどういう返答をするか一気に不安になった。
「……そっか。」
彼女はまだ笑わなかったが、少しだけ穏やかな表情になった気がした。