極上お姫様生活【完】
「は、はい」
八木原君はあたしに背を向けたまま、振り返らない。
「客の男に、アドは絶対教えるな。勝手に抜け出すのも禁止。いつも俺の目の届く距離にいろ」
怒ったような、心配してくれてるような。
多分、後者だよね。
「分かりました」
凛として、大きな背中に微笑むと、八木原君はゆっくり振り返った。
紅色の鉢巻きが、ふわりと揺れる。
「ちょっと、こっちおいで」
「…え?」
グイと腕を引っ張られ、八木原君の胸の中。
……には収まらなかった。