極上お姫様生活【完】
遠のく意識の中で、誰かの声が聞こえた。
―――大した女だな。でも無茶はするな、俺が守るから。
安心するような優しい声を聞いて、あたしは気を失った。
あたしの名前を呼んでくれる人がいて。
包み込むように抱き締めてくれる人がいて。
「蒼空」
何だろう、この気持ち。
温かくて優しい…あなたは―――。
「気が付いた?」
ゆっくりと目を開くと、目の前に誰かの顔があって。でも視界がぼやけて誰だか分からない。
「蒼空ちゃん?」
っ、この声。
「橘君!!」
正体が分かってがばっと起き上がる。と、同時にグルリと景色が揺れる。
「まだ寝てなきゃ駄目だよ。ほら、横になって」
橘君に促され再び横になると、頭の痛みは取れた。だけど今度は頬が痛い。
そういえば、翼ちゃんを庇おうと飛び出たら引っ叩かれたんだっけ。いや…殴られたに近いかな、グーだったし。