極上お姫様生活【完】
橘君が手の甲で、優しくあたしの頬を撫でる。ピリピリとした痛みを感じ、思わず顔をしかめる。
「痛いよね、頬が紫色になっちゃってる」
心配そうにそう言った橘君を覗き見ると、言葉とは裏腹に楽しそうな笑顔が目に入った。
……笑顔?
「蒼空ちゃんをナンパした下衆どもは、ちゃんと懲らしめといたから安心してね」
……どうやって懲らしめたんですか。何でそんな満面の笑み浮かべてるんですか。安心なんてできませんよ。
ていうか。
「ここ、どこですか?」
きょろきょろと目を動かす。白い部屋、…いや大きいテントの中かな。
「海の家の隣。看護室だよ」
「橘君が…運んでくれたんですか?」
意識が途切れる瞬間に聞こえた声は…橘君だったのかな。
夢の中であたしを呼んでいた声も……。
あたしが気が付くまで、ずっと傍にいてくれたのも………。
あたしが温かい気持ちになれるのは、
橘君が傍にいてくれるから?