極上お姫様生活【完】
声のする方を見ると。
「あ」
数メートル先でたくさんの女の子に囲まれている中村君が目に入る。
甘ったるい猫なで声で、一緒に遊ぼうと誘ってる様子だった。
「嫌だって言ってるだろ!」
中村君は本気で嫌がっているみたいだけど、女の子は全く動じない。
ついには中村君の手を引いて、無理矢理連れていこうとしてる。
「八木原君!助けに行きましょう」
ザッと砂を蹴りながら前に進むと、後ろから腕を掴まれる。拍子に少し身体が傾き、危うく倒れるとこだった。
「あんなのいつもの事だ、放っとけよ」
あからさまに不機嫌な声で、八木原君があたしを止める。
「どうしてですか?中村君、困ってるじゃないですか」
この状況で助けに行かないなんてあり得ない。そう思っても、八木原君は動こうとしなかった。