極上お姫様生活【完】
あたしの腕を掴んでいる八木原君の手を振り払う。
零れそうな涙をグッと堪えて、八木原君を睨む。
「分からないです…八木原君の事」
震える声で言葉を絞り出す。八木原君は一瞬目を見開いて、すぐに悲しそうに笑った。
「……そうかよ」
呟くようにそう言うと、あたしに背を向けて行ってしまう。
途端に、後悔が襲った。
違う。傷付けたかったわけじゃない。喧嘩したかったわけじゃない。違うのに。
あたしはズキンと痛む胸を押さえながら、中村君の元へ向かった。
「中村君!」
「あ…蒼空ちゃん!」
女の子の群れを掻き分け、中村君の腕を掴む。瞬間、周囲から野次が飛んできた。
「何こいつー」
「邪魔なんだけど」
「うるさい。行こ、中村君」
苛立ちを隠す気にもなれない。この人たちに構ってる暇はないんだ。