極上お姫様生活【完】
「それにしても暑いな。…浅村、顔が真っ赤だぞ」
え?かき氷食べてるからそこまで熱持ってないと思うんだけどな。
「多分、焼けてるんじゃないか?」
櫻田君があたしの頬を撫でる。ピリリと痛みが走った。
あんなに塗りたくったのにもう焼けちゃうなんて…こうなったら何回でも塗り直してやろう。
「…、あ」
「?」
「あたし、バスの中にポーチ置きっぱなしでした!」
お気に入りの、ピンクのがま口型ポーチ。今ごろバスの中で熱々になってしまっているはず。
「ポーチ…?それが必要なのか?」
「はい、日焼け止めも入ってるので。…ちょっと取ってきますね!」
くるりと踵を返すと、後ろから引き止める声が聞こえる。
「待て。俺もついていく」
「大丈夫です、すぐ戻ってきますので。あ…これ持っててもらえますか?」
あたしは不安そうな顔をする櫻田君に、食べかけのかき氷を渡す。そして今度こそバスへと向かった。