極上お姫様生活【完】
専用の場所に停まっているバス、乗車口は完全に開いている。
……不用心だなー。
手すりに掴まりながら中へ入ると、むわっとした暑さに襲われる。
何だこれ…サウナじゃんか。
「あーやっぱり熱々になっちゃってるし」
ポーチの熱が掌に広がり、持っていられない。ファスナーを滑らせ、中から日焼け止めを取り出すと、それも熱くなってる。
「………脱ご」
我慢の限界だ、パーカーを脱げば少しは涼しくなるはず。
パーカーのファスナーに手を掛けた瞬間、後ろから人の気配がして振り返る。
「―――蒼空」
八木原君がさっきと変わらない、冷たい表情であたしを見据えていた。
身体が固まり、目が逸らせない。
「八木原…君」